DISTILLERY

サントリー大阪工場 スピリッツ・リキュール工房

Suntory Osaka Plant, Spirits & Liqueur Atelier

基本情報

所在地大阪府大阪市港区海岸通3丁目2-30(サントリー大阪工場内)[1]
運営サントリー[2]
前身の築港工場の建設1919年[2]
蒸溜器形状の異なる4基(英語版公式サイトでは4種類のポットスチル)[3][4]
主な設備浸漬タンク、蒸溜釜4基、パイロットディスティラリー、開発ラボ[5][6][2]
投資額総額65億円(2024〜2025年の製造設備55億円、見学設備10億円)[5][6][2]
主な製品ROKU〈六〉、HAKU〈白〉、KANÁDE〈奏〉、翠(SUI)、サントリー梅酒(2026年9月時点の公式サイト)[7][2]
敷地面積約5万㎡[7]
見学2026年5月8日開始。80分、3,000円(税込)、抽選予約制、20歳以上[2]

目次

  1. サントリーでいちばん古い工場
  2. 旬の素材ごとに原料酒をつくり分ける工房
  3. 65億円の投資は「つくる」と「伝える」の2段階
  4. 見学ツアーは80分、原料酒の試飲つき
  5. 評価
  6. 年表

サントリーでいちばん古い工場

大阪工場は、創業者の鳥井信治郎が「国産の洋酒づくり」を志し、創業の地・大阪に築いた工場です。前身の「築港工場」が建てられたのは1919年です。サントリーは、同社でもっとも歴史のある工場だとしています。[2]

WHISKY Magazine Japanによると、築港工場は現在と同じ場所に建てられ、当初は主に「赤玉ポートワイン」を瓶詰めする施設でした。鳥井信治郎は、このとき40歳でした。サントリーの創業は1899年で、ジンづくりは1936年、同社初のジン「HERMES DRY GIN」から始まります。[8][3]

その後もジンの商品は続きました。同誌によると、1964年に「サントリージン」、1980年に「ドライジン エクストラ」、1981年に「ドライジン プロフェッショナル」が出て、90年代半ばには「アイスジン」が加わります。そして2017年のROKU〈六〉、2019年のクラフトウオツカ「HAKU〈白〉」、2020年3月の「翠(SUI)」へと続きます。[9]

敷地は約5万㎡です。2026年9月時点の公式サイトは、生産品目としてROKU〈六〉、HAKU〈白〉、KANÁDE〈奏〉、翠(SUI)、サントリー梅酒を挙げています。WHISKY Magazine Japanは、敷地が中央の道路で2つのエリアに分かれていること、敷地内に背の高い連続式蒸溜機のコラムが見えることも伝えています。[7][8]

旬の素材ごとに原料酒をつくり分ける工房

ジンとリキュールをつくるのは、工場内の「スピリッツ・リキュール工房」です。原料酒は旬の素材からつくります。種類の多い原料酒を熟練のブレンドで組み合わせて、製品に仕上げます。[2]

工房には形の異なる4基の蒸溜器があり、職人は素材ごとに蒸溜器と蒸溜方法を選んで原料酒をつくり分けます。英語版の公式サイトは、この4基を4種類のポットスチル(単式蒸溜器)と紹介しています。[3][4]

建て替え前の2024年7月に工房を訪ねたWHISKY Magazine Japanは、4基を番号順に紹介しています。第1号はいちばん古い釜です。ロンドンのジョン・ドア社が1957年につくった銅製で、首の部分に冷却水を流す覆い(ウォータージャケット)が付いていて、これが精溜器のような働きをします。この釜で柚子を蒸溜します。[10]

第2号は4基の中でいちばん新しい銅製の釜で、レモンの皮とオレンジの皮の原料酒をつくります。第3号も銅製でウォータージャケットを備え、首は第2号より長く、ジン用のスピリッツを受け持ちます。残る第4号は違います。ただ1基のステンレス製で、背もいちばん低い釜です。釜の中の気圧を下げて低い温度で沸かす減圧蒸溜に使われ、緑茶や桜といった日本ならではの素材を蒸溜します。[10]

同誌は漬け方にも触れています。サントリー梅酒は、ニュートラルスピリッツに梅を1年間漬けてつくります。桜葉は数週間漬けてから減圧蒸溜に回し、レモンは凍らせてから蒸溜釜の中のスピリッツに一晩漬けます。[10]

Difford's Guideも、ROKU〈六〉の桜花はステンレス製、柚子は銅製のポットスチルで蒸溜すると紹介しています。[11]

素材の鮮度も工程に組み込まれています。サントリーによると、手摘みした桜花が工房の浸漬タンクに入るまでは、およそ26時間です。浸漬タンクは、素材をスピリッツに漬けて香りを移すための設備です。[3]

65億円の投資は「つくる」と「伝える」の2段階

工房は2024年から大きく変わりました。サントリーは2024年2月、ジン事業の方針を示す発表の中で、2025年にかけて55億円を投じて工房を建て替えると明らかにしています。浸漬タンクの新設と蒸溜釜4基の更新で、大阪工場全体の生産能力を2.6倍に、ジンの原料酒は2倍にする計画です。[5]

同じ発表によると、ROKU〈六〉は60カ国以上で扱われ、販売量の約9割を海外が占めていました。国内でも2023年の販売数量が前年の159%に伸びています。サントリーはこのとき、国内のジン市場を2030年に450億円規模へ広げる目標も掲げました。同じ工房でつくる翠(SUI)については、発売した2020年と比べて、2023年にはブランド全体で約10倍の規模に育ったとしています。[5][2]

2025年2月には、この55億円を「つくる」ための投資と位置づけ、中身として浸漬タンクや蒸溜器の更新に加え、小さな規模で試作できる蒸溜設備「パイロットディスティラリー」と開発ラボの新設を挙げました。あわせて「伝える」ための10億円を追加し、工房へのアプローチの整備、新しい蒸溜器を見渡せるデッキ、360度シアターを備えたセミナールームをつくると発表しています。投資の総額は65億円です。[6][2]

発表にはROKU〈六〉の数字もあります。2024年末時点で約60カ国で扱われ、海外が販売量の約9割でした。調査会社IWSRのデータでは、平均売価30米ドル以上の銘柄を対象にした2023年の世界のプレミアムジンランキングで、3位に入っています。国内の2024年の販売数量は、前年の134%でした。[6]

見学ツアーは80分、原料酒の試飲つき

工房の見学ツアーは、2026年5月8日に始まりました。予約は4月9日の9時30分に公式サイトで受け付けを始めました。抽選制です。所要時間は80分です。参加費は3,000円(税込)で、20歳以上が対象です。参加費には、お土産のROKU〈六〉200mlが含まれます。[2]

順路は5つのエリアに分かれています。最初の「はじまりのラウンジ」では、工場の歴史と創業者の思い、製品を大きなスクリーンで紹介します。続く「ボタニカルロード」には、大島桜、八重桜、ジュニパーベリー、レモン、ビターオレンジなど、ROKU〈六〉に使う素材と創業者のことばが並びます。[2]

中心になるのは4階の製造工程の見学です。原料素材の展示に続いて、浸漬タンク、蒸溜釜、パイロットディスティラリーを見て回ります。1階の「クリエイションルーム」には360度のスクリーンがあり、ここで原料酒をテイスティングします。最後の「ギフト&ギャラリー」では、工場の製品や限定グッズを買えます。ここだけの利用は受け付けていません。[2]

営業日と時間は公式サイトで案内されています。年末年始と工場の休業日は休みで、臨時に休む日もあります。[7][1]

評価

2025年には、国際的なコンペティションIWSC 2025のスピリッツ部門で「リキュール・プロデューサー・トロフィー」を受賞しました。サントリーによると、日本の工場としては初めての受賞です。[2][12]

年表

1899年鳥井信治郎が創業[3]
1919年創業者・鳥井信治郎が、大阪工場の前身「築港工場」を建設[2]
1936年サントリー初のジン「HERMES DRY GIN」を発売[3]
2017年ROKU〈六〉を発売(国内は7月4日)[5][13][14]
2024年2月2025年にかけて55億円を投じ、工房の建て替え、浸漬タンクの新設、蒸溜釜4基の更新を行うと発表[5]
2025年2月見学設備などに10億円を追加投資し、総額65億円とすると発表(2026年春の一般公開をめざす)[6]
2025年IWSC 2025で「リキュール・プロデューサー・トロフィー」を受賞(サントリーによると日本の工場として初)[2][12]
2026年4月9日見学ツアーの抽選予約受付を開始[2]
2026年5月8日スピリッツ・リキュール工房の見学ツアーを開始[2]

サントリー大阪工場 スピリッツ・リキュール工房の銘柄

参考資料

  1. サントリー
  2. サントリーホールディングス(ニュースリリース 2026年4月8日)
  3. サントリー
  4. The House of Suntory(Suntory Global Spirits)
  5. サントリーホールディングス(ニュースリリース 2024年2月7日)
  6. サントリーホールディングス(ニュースリリース 2025年2月18日)
  7. サントリー(大阪工場 公式サイト)
  8. WHISKY Magazine Japan(2024年7月24日)
  9. WHISKY Magazine Japan(2024年7月29日)
  10. WHISKY Magazine Japan(2024年7月26日)
  11. Difford's Guide
  12. IWSC(International Wine & Spirit Competition)ニュース 2025年11月12日
  13. BAR TIMES
  14. 流通ニュース

最終更新:2026-09-28 内容の誤りを知らせる