DISTILLERY

ガーヴァン蒸溜所

Girvan Distillery

基本情報

所在地スコットランド・サウス・エアシャー、ガーヴァン(グレンジストーン工業団地、KA26 9PT)[1][2][3]
運営ウィリアム・グラント&サンズ[4][5]
建設1963年(9か月で完成)[5][2]
グレーンウイスキーの蒸溜小麦に大麦麦芽8.5%。複数塔の減圧式連続式蒸溜器、年間生産能力1億1,500万リットル[2]
ジンの蒸溜棟ヘンドリックス・ジン・パレス(投資額1,300万ポンド、2018年発表)[4]
ジンの蒸溜器6基(ベネット式4基、カーターヘッド式2基。いずれも最大仕込み量1,000リットル)[4][1]
ジンの仕込み水蒸溜所の奥の丘にあるペンワップル貯水池[1]
見学原則として受け入れなし[6]

目次

  1. 9か月で建てたグレーンウイスキーの蒸溜所
  2. ヘンドリックス・ジン・パレス
  3. 6基の蒸溜器は、2基の原型から増やしたもの
  4. マスターディスティラーと研究室
  5. ブランドが語る物語
  6. 年表

9か月で建てたグレーンウイスキーの蒸溜所

ガーヴァン蒸溜所は、ウィリアム・グラント&サンズがスコットランドのサウス・エアシャーに持つ蒸溜所です。ブレンデッドウイスキー「グランツ」の中心になるグレーンウイスキーをつくるために建てられました。[5][3]

きっかけは原酒の仕入れでした。scotchwhisky.comによると、当時の大手DCL(ディスティラーズ・カンパニー)がグラント社へのグレーンウイスキーの供給を止めると告げ、一家は自前の蒸溜所を建てると決めます。1963年、チャールズ・ゴードンと地元の400人が昼夜を問わず働きました。工期は9か月。最初のスピリッツは、その年のクリスマス当日に流れ出しました。創業者ウィリアム・グラントが最初の蒸溜所を開いた1887年から、76年後のことでした。[2][5]

原料は小麦。これに大麦麦芽を8.5%加え、複数の塔を連ねた減圧式の連続式蒸溜器で蒸溜します。年間の生産能力は1億1,500万リットルです。[2]

同じ敷地では、ウイスキー以外のものもつくられてきました。1965年から1975年まではモルトウイスキーのレディバーン蒸溜所が動いていたほか、モルトウイスキーのエールサ・ベイ蒸溜所とヘンドリックスの蒸溜棟も、ガーヴァンと同じグレンジストーン工業団地の中に置かれています。ブランドの紹介では、蒸溜所は海岸から1マイルほど内陸。沖には火山島のアルサ・クレイグが見えます。[2][3]

ヘンドリックス・ジン・パレス

2018年10月、ウィリアム・グラント&サンズは、ガーヴァンの敷地に1,300万ポンドを投じた蒸溜棟「ヘンドリックス・ジン・パレス」を発表しました。蒸溜器は前年の2017年11月から動いています。生産能力は倍の年200万ケースに。発表の場でグレイシーは、20年近くヘンドリックスを蒸溜してきたと振り返り、新しい蒸溜所で実験的な原酒づくりに取り組むのが楽しみだと語っています。[4]

テーマは「実験と発明と好奇心の遊び場」。蒸溜室が2つあり、塀で囲んだ庭にはヴィクトリア朝風のパームハウス(ヤシなどを育てるガラスの温室)が建っています。世界の珍しい植物を育てる温室が2棟、上の階にはマスターディスティラーのレスリー・グレイシーの研究室があり、香りの資料室、講義室、バーもそろっています。[4]

温室の1棟は地中海の植物のため、もう1棟は熱帯雨林を再現したもので、グレイシーはここで育てた植物を使って新しいジンの試作を重ねています。[7][8]

見学は、原則として受け付けていません。[6]

Difford's Guideは、キニーネを加えたオービウム(2017年)のほか、限定品としてミッドサマー・ソルスティス(2019年)、ルナー(2020年)、ネプチュニア(2022年)、フローラ・アドーラ(2023年)、グランド・キャバレー(2024年)を挙げています。[6]

6基の蒸溜器は、2基の原型から増やしたもの

蒸溜器は6基。ベネット式は1860年代の原型1基と複製3基の計4基、カーターヘッド式は1948年製の原型1基と複製1基の計2基です。The Gin Guildによると、原型をそのまま写したベネット式の2基目は2015年に加わりました。[4][1][7]

原型の2基には来歴があります。1966年にチャールズ・ゴードンが、閉鎖されたロンドンのタプロウ蒸溜所が設備を競売にかけたときに手に入れたものです。ベネット式は、釜を包む外套に蒸気を通して温めるポットスチル(単式蒸溜器)で、形としてはごく標準的なものです。カーターヘッド式はジョン・ドーア製で、ボタニカルをかごに入れて蒸気に香りを移す、ヴェイパー・インフュージョン用の蒸溜器です。[1]

ベネット式は、60%に割った小麦のニュートラルスピリッツにボタニカルを14時間以上浸してから加熱するので、1回の蒸溜に時間がかかります。そこで、カーターヘッド式1基にベネット式2基を組み合わせています。カーターヘッド式は約10時間で終わります。どちらも最初の10リットルは中溜と分けますが、カーターヘッド式ではこの10リットルがボタニカルを通り抜け、洗って後に続く蒸気に備える役目も果たします。そのあと、どちらもおよそ80%の中溜を約500リットルずつ取り分けます。6基とも最大1,000リットルの仕込み。安全設備は新しくしても、操作はすべて手作業で行います。[1]

2つの原酒は、おおよそ半分ずつ合わせます。そこへローズとキュウリのエッセンスを加えます。ローズはブルガリア産ダマスクローズの花びらの油、キュウリは0℃ほどで蒸溜したオランダ産です。水は、奥の丘にあるペンワップル貯水池から。ろ過だけして使います。[1][9]

マスターディスティラーと研究室

レシピの作り手はレスリー・グレイシー。ヨークシャー生まれの化学者です。製薬業界で香料の研究開発に携わったあと、1988年にウィリアム・グラント&サンズの技術チームへ入り、はじめはウイスキーの仕事をしていました。製造元は、勤続37年を超える現職のマスターディスティラーとして紹介しています。[8][7]

ヘンドリックスの開発は、1990年代の終わりに当時の会長チャールズ・ゴードンがグレイシーに頼んだことから始まりました。2基の古い蒸溜器を使い、キュウリとローズを入れることが条件です。試作でキュウリを蒸溜すると黒ずんでしなび、キャベツ料理のようなにおいになったため、キュウリとローズは蒸溜のあとに加える形に落ち着きました。[8][7]

派生のジンも、グレイシーの体験から生まれています。2013年には新しいボタニカルを探してベネズエラの熱帯雨林を訪れ、持って行った10リットルの蒸溜器で森の中で蒸溜を始めました。この経験が「アマゾニア」につながります。夜の庭の香りから生まれた「ルナー」、西海岸の夕日から生まれた「サンスペル」も、彼女の観察から生まれたジンです。ブランドアンバサダーの結婚式で使われたブーケの花から「ミッドサマー・ソルスティス」を、キニーネをジンに直接加える発想から「オービウム」をつくったのもグレイシーです。[7][8]

ブランドが語る物語

ブランドが伝える話では、ヘンドリックスの出発点は、ウィリアム・グラントの孫娘ジャネット・シード・ロバーツ(ジャニーおばさん)の庭でした。蒸溜家デイヴィッド・スチュワートがバラに囲まれ、キュウリのサンドイッチとジンを楽しんでいたことが発想のもとになったとされます。名前は、屋敷のバラを手入れしていた庭師ヘンドリックにちなむといいます。ロバーツは2012年に110歳で亡くなりました。[6]

年表

1963年チャールズ・ゴードンと地元の400人が9か月でガーヴァン蒸溜所を建設。クリスマスの日に最初のスピリッツ[5][2]
1965〜1975年敷地内でモルトウイスキーのレディバーン蒸溜所が稼働[2]
1966年チャールズ・ゴードンが、閉鎖されたロンドンのタプロウ蒸溜所の競売で、ベネット式とカーターヘッド式の蒸溜器を入手[1]
1988年レスリー・グレイシーがウィリアム・グラント&サンズの技術チームに化学者として入社[8]
1999年スコットランドでヘンドリックスが誕生[6][10]
2000年米国で発売[6]
2003年英国で発売[6]
2013年グレイシーがベネズエラの熱帯雨林で植物を蒸溜。のちの「アマゾニア」につながる[7]
2015年原型を写したベネット式の2基目が加わる[7]
2018年10月1日1,300万ポンドを投じた「ヘンドリックス・ジン・パレス」を発表。蒸溜器は2017年11月から稼働[4]
2025年1月1日ブラウンフォーマンジャパンがウィリアム・グラント&サンズの日本総代理店となり、ヘンドリックスの輸入・販売を開始[11]

ガーヴァン蒸溜所の銘柄

参考資料

  1. Difford's Guide
  2. scotchwhisky.com(Whiskypedia)
  3. Hendrick's Gin(公式サイト FAQ)
  4. The Spirits Business(2018年10月)
  5. Grant's(William Grant & Sons)
  6. Difford's Guide(Hendrick's 歴史)
  7. The Gin Guild
  8. William Grant & Sons(製造元・レスリー・グレイシー紹介)
  9. William Grant & Sons(製造元)
  10. Difford's Guide
  11. ブラウンフォーマンジャパン(プレスリリース、2025年1月6日)

最終更新:2026-09-29 内容の誤りを知らせる