カルダモンCardamom
ショウガ科の実のさやを乾燥させた香辛料で、ジンには緑のさやが多く使われ、スパイスの温かみにユーカリのような清涼感を添えます。黒いカルダモンは別の属の植物で、燻したような香りをもちます。
カルダモンの基本情報
| 学名 | Elettaria cardamomum (L.) Maton(グリーン)。ブラックは別の属で、Amomum subulatum など[1][2][3] |
|---|---|
| 科 | ショウガ科(Zingiberaceae)[1][2] |
| 使う部位 | 実のさや。中の小さな黒い種が香りのもと[4][5] |
| 主な産地 | 原産は南西インド。栽培は南インドの西ガーツ山脈に集中し、2014年のUSDA報告では輸出量の首位がグアテマラ。ブラックはインド北東部からネパール、ブータン[1][6][7][8] |
| 収穫期 | 10月〜2月(The Gin Guild)。グアテマラは9〜10月、12〜1月、3〜4月の3回(USDA、2014年)[9][7] |
| 香りの系統 | スパイス系。スパイシーで柑橘のような、ユーカリに通じる清涼感[4] |
目次
植物としてのカルダモン
カルダモンは、ショウガ科の植物の実です。使うのは、さやと、その中に詰まった小さな黒い種です。ジンでよく使われるのは、学名 Elettaria cardamomum の緑のさやです。酒の専門サイトDifford's Guideは、カルダモンには緑と黒の2種があると説明しています。広く使われるのは緑。繊細とされているためです。[4][1]
原産地は南西インドです。英国のキュー王立植物園が運営する Plants of the World Online は、地下に根茎をもつ植物と説明しています。Difford's Guideは、インド南西部のマラバール地方に育つ植物で、さやには小さな黒い種がたくさん入っていると書いています。さやの大きさは、Gin Foundryによればクランベリーほどです。[1][4][10]
香りのもとは種ですが、種は香りが抜けやすいため、ふつうはさやのまま売られている、と香辛料の解説サイトSpice Pagesは書いています。[5]
グリーンとブラックは、別の属の植物です
「カルダモン」と呼ばれる香辛料には、Elettaria属のものと Amomum属のものがあり、どちらもショウガ科です。The Gin Guildによると、Elettariaのさやは淡い緑色で、Amomumのさやはそれより大きく、濃い茶色をしています。前者がグリーンカルダモン、後者の Amomum subulatum などがブラックカルダモンにあたります。名前は同じでも、別の植物です。[9][3]
原産地も違います。Plants of the World Online は、Elettaria cardamomum の原産を南西インド、Amomum subulatum の原産を「ネパールから中国中部」と記しています。栽培地について、インドの香辛料局は、緑を南インドの西ガーツ山脈、ブラックをインド北東部からネパール、ブータンの亜ヒマラヤ地帯としています。ブラックの畑は標高800〜2,000メートル。冷涼で湿潤な土地です。[1][2][6][8]
香りを分けるもう一つの要素が、乾燥のしかたです。ブラックは伝統的に直火で乾燥させ、強い燻製の香りがつきます。Spice Pagesによると、新鮮な芳香があり、樟脳もはっきり感じられます。火で燻すのはネパール種だけだといいます。[3]
緑のほうは、煙の香りが歓迎されません。米国農務省(USDA)の2014年の報告は、グアテマラの乾燥法に薪火、太陽熱、天日をあげ、薪火は煙の香りが移るので品質が下がるとしています。[7]
ジンの香りとして、Gin Foundryはグリーンに「ユーカリ油(eucalyptol)の風味」を、ブラックには「より煙っぽい余韻」を挙げています。精油の成分にも差があります。ブラックの精油は種の約3%で、その約70%が1,8-シネオールだと、Spice Pagesは書いています。グリーンについては、別の資料が1,8-シネオールを20〜50%としています。水と一緒に蒸溜して得た油は1,8-シネオールが少なめで、抽出法によって割合が変わるそうです。[10][3][5]
ブラックを使うジンもあります。Difford's Guideは、Dodd'sの8種のボタニカルにグリーンとブラックの両方を挙げています。Gin Foundryは、同じ銘柄がいつもの緑ではなく黒を使うと書いていて、説明が食い違います。[11][10]
産地と収穫期
インドの香辛料局によると、緑のカルダモン(small cardamom)は南インドの西ガーツ山脈の常緑林に集中して栽培されます。育ちやすい標高は600〜1,500メートル。代表的な等級名に「Alleppey Green Extra Bold」があります。Spice Pagesは、原産を南インドとスリランカとしたうえで、インド産をやや小粒で香りが強いと書いています。インドは国内の需要が大きく、輸出に回る割合は小さいそうです。[6][5]
2014年のUSDA報告では、輸出の首位はグアテマラです。報告の本文によると、年産は約3万5,000トン。2013年の輸出は3万8,453トンで、金額は2億1,750万ドルでした。生産の68%はアルタ・ベラパス県、14%はキチェ県、8%はウエウエテナンゴ県。輸出先は、2006〜2012年の平均で、サウジアラビアが約32%、アラブ首長国連邦が約14%、シリアが約8%でした。[7]
収穫は手摘みで、そのあとに乾燥させます。The Gin Guildの収穫期は10月から2月。USDAの報告によると、グアテマラでは開花の5カ月後に摘みはじめ、9〜10月、12〜1月、3〜4月(5月にかかることもある)の3回に分けて収穫します。[9][7]
古代から知られた高価な香辛料。グアテマラの歴史は第一次世界大戦の前から
古代ギリシャ人は、カルダモンを高価な交易品として知っていました。Spice Pagesによると、呼び名は kardamomon(καρδάμωμον)です。ローマの文献には amomum と cardamomum という東方の香辛料が出てきます。同じ品とみる説もありますが、別の品種だった可能性が高いとされます。名前は英語、ドイツ語、ノルウェー語、デンマーク語、ポーランド語、ロシア語でほとんど変わりません。同サイトは、この名前に満足のいく説明はないと書いています。[5]
古代の使い道は、Gin Foundryの概説によります。古代エジプト人は口をすすぐ液や遺体の防腐処理に使いました。ギリシャ人とローマ人は香水や軟膏に加えました。薬としては、うっ血や結核、クモやヘビの咬傷にまで使われたといいます。[10]
グアテマラへの導入は、第一次世界大戦の前でした。The Gin Guildによると、持ち込んだのはドイツ人のコーヒー農園主、Oscar Majus Kloeffer で、インドのカルダモンでした。同サイトは、グアテマラが最大の生産・輸出国になったとも書いています(年の記載はありません)。Spice Pagesの説明は違います。最大の生産国はインドで、グアテマラは主な輸出国。グアテマラで作るのは輸出向けで、栽培の開始は1世紀に満たない前だといいます。生産量の1位は、資料によって食い違います。[9][5]
ジンでは、スパイスの温かみに、ユーカリのような清涼感を足す
風味を一言でいえば、スパイシーで、柑橘のようで、ほとんどユーカリ。Difford's Guideは、カルダモンがジンに加える風味をこう書いています。[4]
Gin Foundryの表現では、蒸溜したカルダモンは「草の毛布のように、とても緑っぽい」香りです。鼻には明確な刺激があります。味わいはやや華やかで、最初は甘く、余韻に燃えるような辛さが残るそうです。[10]
No.3 の公式サイトは、カルダモンにはこしょうや松、ミントを思わせる面があると書いています。口に含むと、花の香りとカルダモンの温かみのあとに、柑橘の鮮やかさが続くという紹介です。[12]
飾りにも使えます。Gin Foundryは、ジントニックの飾りに勧め、相性のよい相手にオレンジを挙げています。[10]
Gin-Atlasの銘柄での使われ方
Gin Mare は、メーカーがボタニカルを役割で二つに分けています。主役はオリーブ、ローズマリー、タイム、バジルの4種。オレンジ、レモン、コリアンダーシード、ジュニパーベリー、グリーンカルダモンがそれを支えます。カルダモンの産地は、Difford's Guideによればスリランカです。[13][14]
No.3 ロンドン・ドライ・ジンは、6種のボタニカルの一つがカルダモンです。ベリー・ブラザーズ&ラッドの取材記事で、ブライアントはカルダモンをグアテマラ産と話しています。Gin Foundryは、6種を果実系とスパイス系に分けています。カルダモンはアンジェリカ、コリアンダーと並ぶスパイス系です。[15][16]
Opihr は、産地の表記が割れています。英国版の公式サイトはカルダモンをタンザニア産とし、豪州版の公式サイトはインド産としています。理由は、わかりません。英国版は、香りの背景にあるクミンとカルダモンを、温かく土っぽい香りと説明しています。[17][18]
ROKU では、サントリーの2020年の発表が、カルダモンをジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカ、シナモン、オレンジ、レモンと並ぶ、伝統的なボタニカル8種の一つとしています。Silent Pool の公式サイトは、カルダモンを、土っぽさを添えるベチバーと並べて、奥行きを出す役として紹介しています。[19][20]
料理・飲み物での使われ方
用途で目立つのはコーヒーです。世界の生産の約60%はアラブ諸国に輸出され、その大半がコーヒーに使われる、とSpice Pagesは書いています。カルダモン入りのコーヒーは「ほとんどアラブのもてなしの象徴」です。豆と、軽く炒ることもあるさやを一緒に挽き、砂糖と煮出して、小さなカップでゆっくり飲みます。[5]
北欧では、クッキーや甘いパンのほか、ペストリーやソーセージにも使うとSpice Pagesは書いています。インドの香辛料局も、スカンジナビア諸国の焼き菓子に触れています。[5][6]
インドとスリランカの料理にも登場します。ビリヤニでは、米を最初にゆでるときにカルダモンやクローブ、シナモンを入れます。ガラムマサラやチャイのマサラにも入り、スリランカでは牛肉や鶏肉の辛いカレーにシナモンと一緒に加えます。[5]
ここでも緑とブラックは使い分けられます。Spice Pagesによると、ブラックは辛くて素朴な料理に向き、北インドのコルマや四川の長時間煮込む肉料理にも入ります。緑は、甘い香りを繊細に重ねるムガル帝国の宮廷料理に好まれました。インドの香辛料局は、ブラックをプラオやビリヤニ、肉料理、カレー粉に使うとしています。[3][8]
精油やオレオレジンも使われます。香辛料局によると、用途は加工食品やコーディアル、酒類の香りづけ、香水、アーユルヴェーダの薬です。[6]
カルダモンを使ったジン
- LUO パロサントジン日本・コンテンポラリージン40.0%
- LUO 盆栽ジン日本・コンテンポラリージン—
- No.3 ロンドンドライジンオランダ・ロンドンドライジン46.0%
- アルケミスト ジンスペイン・コンテンポラリージン40.0%
- オピア ジンイングランド・ロンドンドライジン42.5%
- コッツウォルズ ドライジンイングランド・ロンドンドライジン46.0%
- サイレントプール ジンイングランド・ロンドンドライジン43.0%
- サントリー ジャパニーズクラフトジン ROKU〈六〉日本・ジャパニーズジン47.0%
- ジーヴァイン フロレゾンフランス・コンテンポラリージン40.0%
- ジン・マーレスペイン・コンテンポラリージン42.7%
- ドラムシャンボ ガンパウダー アイリッシュ ジンアイルランド・コンテンポラリージン43.0%
- ドラムシャンボ ガンパウダー アイリッシュ ジン イタリアンフィグアイルランド・コンテンポラリージン43.0%
- ドラムシャンボ ガンパウダー アイリッシュ ジン カリフォルニアオレンジアイルランド・コンテンポラリージン43.0%
- ドラムシャンボ ガンパウダー アイリッシュ ジン サルディーニャレモンアイルランド・コンテンポラリージン43.0%
- ドラムシャンボ ガンパウダー アイリッシュ ジン ブラジリアンパイナップルアイルランド・コンテンポラリージン43.0%
- ブロークン・ボーンズ ロンドンドライジンスロベニア・ロンドンドライジン45.0%
- モンキー47ドイツ・コンテンポラリージン47.0%
参考資料
- Kew Plants of the World Online(Elettaria cardamomum)
- Kew Plants of the World Online(Amomum subulatum)
- Gernot Katzer's Spice Pages
- Difford's Guide
- Gernot Katzer's Spice Pages
- Spices Board India(インド商工省の香辛料局)
- USDA Foreign Agricultural Service, GAIN Report(2014年7月)
- Spices Board India(インド商工省の香辛料局)
- The Gin Guild
- Gin Foundry
- Difford's Guide
- No.3 Gin(Berry Bros. & Rudd)
- Gin Mare 公式
- Difford's Guide
- Berry Bros. & Rudd
- Gin Foundry
- OPIHR 公式(Spices of the Orient・英国版)
- OPIHR 公式(Oriental Spiced・豪州版)
- サントリーホールディングス(ニュースリリース 2020年)
- Silent Pool Distillers 公式(ボタニカル)